現在、クリニックの事務長を務める私は、以前の職場で、株式会社の設立を司法書士や税理士等の専門家の手を借りずすべて自分で行ったことがあります。その経験を活かし医療法人の設立手続きを私一人でするよう、院長から指示されました。ところが取り組み始めてはみたものの、日常業務に忙殺され、法人化のための作業も停滞気味となってしまいました。そしてついに院長に怒られてしまったのです。どうしてこうなってしまったのでしょうか。

<回答>
医療法人の設立業務を、株式会社設立と同程度のものと想定してしまったのが失敗のポイントでしょう。

正しい対応
医療法人設立に際しては、1人で取り組まず、経験や技術の豊富な専門家への依頼も検討してみましょう。医療法人の設立は株式会社等の設立とは異なる手段や、制限、特徴があるからです。
特徴の一つとしては、診療所のある都道府県知事の認可を要する点が挙げられます。その他にも様々な手続きが、法務局、保健所、厚生局、税務署等で求められます。また、これらの手続を行う際、医療法人設立後の経営を鑑みて重要な意思決定を下さなければならない場合があるので注意が必要です。

[税法等の解説]
医療法人設立認可手続
都道府県知事(複数県にまたがる場合は厚生労働大臣)の認可を受けるために、以下の手続が必要となっています。

手続きと必要書類について
1.医療法人設立説明会
2.定款・寄附行為(案)の作成
3.財産目録の作成
4.設立総会の開催
5.事業計画書・予算書の作成
6.設立認可申請書の作成
7.設立認可申請書の提出(仮受付)
8.設立認可申請書の審査
9.医療審議会への諮問(本申請)
10.答申
11.設立認可申請書交付
12.設立登記申請書類の作成・申請
13.登記完了(法人設立)
14.登記完了届の提出
15.病院(診療所)開設許可申請
16.病院(診療所)開設届・個人開設の病院(診療所)廃止届
17.保険医療機関指定申請・遡及願
18.諸官庁への事業開始にともなう各種届出

認可には、1.~11.の手続きが必要です。都道府県ないし厚生労働省が関連しています。
12.13.の手続を法務局で行うことを要します。
登記完了届として14.を都道府県に提出しなければなりません。
15.16.の手続を保健所では要します。
17.の申請を厚生局では要します。
18.を事業開始にあたり所轄の税務署などに届け出なければなりません。

税理士からのPOINT!
医療法人の手続きは要領よく行わなければ成功しません。ただ労力をかければ行える、というものではなく、知識と経験が必要なので、医療に精通する税理士とよくコンタクトを取り、後悔しない法人設立を進めてください